前川國男建築
前川國男建築の保存と活用
「建築はその地域の価値を高め、そこに暮らす人の誇りとなる」をモットーに、泊まれる前川建築の文化的価値を高めることで地域と建築の絆を深める。地域の魅力の一つとなり、活性化へと繋がる
日本初・泊まれる前川國男建築
熱海の華やかな中心地から少し離れた古の別荘地にひっそりと佇む古民家・稲村ハウス。2005年に現在の所有者が購入し、2020年7月に旅館業法の許可を得て民泊として開業。
購入した当時から前川國男設計との話はあったが確証はなく、2020年9月より調査を開始。前川國男建築設計事務所の橋本所長の調査により、1941年に竣工の記録や青焼き図面のコピーなどが見つかり当時来日していたドイツの設備設計士、アウグスト・ペーター・テーテンスの別邸として建造されたことが判明した。前川國男設計による木造民家は全国で二例目であり、泊まれる前川建築としては全国初。
旧テーテンス別邸 (稲村ハウス) 1942年竣工
概要
モダニズム建築の巨匠・前川國男が空調設備設計士のアウグスト・ペーター・テーテンス氏 より依頼されして設計した。同年に前川熱海別邸(現存せず)と自邸(現在は江戸たてもの園 へ移築)が竣工されており、いずれも木造邸宅である。
東京から車で一時間半、昔から温泉・歴史・グルメと多くの人に愛されてきた熱海。その熱 海と隣接する湯河原の間に、ひっそりとした別荘地・稲村地区。 そこはとても静かな集落ゆえに、昭和初期より有名人や文豪などが別荘を建てた高級別荘 地であり、旧テーテンス別邸もまさに「隠れ家」という言葉がふさわしい佇まいの家である。
ドイツ人アウグスト・ペーター・テーテンス(以下テーテンス氏)は 1914 年に空調設備施工 会社の建材社(現大気社)暖房工事の技師として来日した。当時日本の空調設備設計はアメリ カ製とドイツ製が採用されていたがその技術はまだまだ未熟であったため、テーテンス氏 がシステム設計及び施工の指導に当たり、当時の日本における数多くの建築の設備設計に 携わっている。彼もまた日本の空調設備の発展において、なくてはならない人物である。
建材社時代から、テーテンス氏は建築家アントニン・レーモンド氏と一緒に仕事をすること が多く、1924年にはレーモンド氏がテーテンス邸(現存せず)を設計している。
前川國男 はその6年後の1930年、コルビジェのアトリエから帰国しレーモンド事務所へ入所、1 935年に独立しますがテーテンス氏とはその時代に親交を深めたのではないかと推測さ れる。 テーテンス氏が亡くなった後所有者が変わり、しばらくは別荘として利用されていたが、時 を経るにつれてそれもなくなり寂しい空き家となっていった。家は見る見るうちに朽ちて いき、猿が住み着き雨漏りがして床も抜け落ち始めた。 ちょうどその頃現在の所有者が隣家を購入して住み始め、テーテンス邸(その当時は認識せ ず)が目の前で朽ちていくのを残念に思い購入。自身で修繕を行い住居として活用、その 4 年後に民泊としてオープンした。 前川國男の設計した木造邸宅で現存するのは自邸とこの家の2棟だけ。その存在が知られ たのはオープンしてから二か月後だった。
購入時に前川建築らしい、と聞いてはいたが確証 がないため前川建築設計事務所へ調査を依頼、橋本所長の協力により、前川氏の設計に間違 いないと承認された。特徴的な丸柱や外観は当時のまま残っており、まさに”奇跡”といえる。 広い庭からは海が一望でき、波の音だけがすぐそばで聞こえる別世界。前川氏が目指した空 間を泊まりながら体感できる。
メディア掲載情報
2021.11.30 | VOGUEに紹介していただきました!! |
2021.08.30 | DOCOMOMOJAPAN 東京大会が開催され、ビデオ映像にて参加しました |
2021.04.06 | 短編映画のロケが行われました |
2021.03.31 | 近代建築の保存活動を行う DOCOMOMOJAPAN の国際会議に論文提出、参加が決定しました |
2021.03.25 | 静岡新聞とヤフーに掲載されました |
2020.11.02 | 熱海新聞に掲載されました |
2020.11.01 | 【Youtube】モダニズム建築の巨匠! 前川國男設計の邸宅・稲村ハウスにあの人たちがやってきた! |
2020.11.01 | 前川事務所・橋本所長とテーテンス事務所・桜井所長が来訪 |
稲村ハウスの
ご宿泊と見学について
10月末まで見学を受け付けております